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1.敗者の哲学 〜負けること〜 《おもちゃの倉》

 1歳5ヶ月の(男児》と、1歳2ヶ月の(女児)は初対面同士です。ふたりは1つのおもちゃをめぐって虎視眈々(たんたん)、相対峠(じ)しております。お互いに何とかして、その「対象物】を自分の所有物にしてしまいたいわけです。ここには「ほしい」「ちょうだい」「いや」に類する日本語はまったく存在いたしません。ただ目と表情のしぐさのノンバーバル・コミュニケーションがそのすべてです。これらは情動や感情、行動、経験の共有や分離をめぐる心的葛藤そのものに他なりません。この意味において幼いふたりのコミュニケーションはなんと豊かな内実を持つことでしょうか。思わずわたしは拍手を交えながら、「お互いに負けないで、がんばって・・・」と叫んでしまいました。

 そのうち、いやついに男児が体力にまかせて対象物を専有してしまいました。当然のことながら女児は不満です、泣き叫びながら母親に訴えます。男児の母親は申しわけなさそうに「すみません」と謝ります。これに対して「いいえ、どういたしまして」と、母親同士のコミュニケーションが始まります、それでも1敗地にまみれた女児には、思いどおりにならなかったくやしさがふつふつと沸き起こっていることでしょう。

 今日わが国では、世界のいずれの国も体験したことのない急激な少子化が進行しています。少なく産んで手厚く育てるとの夢は夢として果てしなく広がります。それだけに「勝つことのみ」を希求する受験戦争も、学校5日制などとは無関係に疾風怒濤の勢いで低年齢化を強めています。しかしながら、真の勝者としての人間的成長やたくましさは、前述の女児が涙のなかで味わっている、「負けた」「挫折した」無念さの中に横たわっているのではないでしょうか。

  21世紀の最大の教育的課題とも呼べる「温かい思いやりの心」「たくましく生き抜く力」は、まぎれもなく勝者の側だけではない「敗者の哲学」の中にひそかに内在するにちがいありません。

 なのに、わたしたちの子育てや教育観は、いつから勝つこと至上主義に傾斜してしまったのでしょうか。こどもの城での遊びや暮らしの場は、「負けた」「挫折した」経験の大切さ、それへの1歩の踏みこみの意義の検証のためにあることを忘れてはなりません。

平成11年8月1日
 
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がまんする心
1.敗者の哲学
〜負けること〜
《おもちゃの倉》
2.ああ、同胞
〜損な役〜
《映像コーナー》
3.体験・労作学習
〜雑草のごとく〜
《果実の森》
4.危険回避力
〜擦りむき傷〜
《せせらぎ》
5.体力診断テスト
〜運動能力こそ〜
《マウンテンバイクコース》
6.開園5周年
〜3つ子のたましい〜
《こどものまち》