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見えない学力
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3.「鳩の糞(ふん)害」 〜親は無くとも子は育つ〜《光の塔》
 「光の塔」の中に、鳩がいつの間にか巣をつくりました。当初の私たちは、この出来事を「鳩と人の共生の風景」として歓んでおりました。ところが鳩がたれ流す糞(ふん)の悪臭と共に、塔のプリズムガラスが反射しなくなってしまったのです。こんな不都合が生じますと、人間本位の考え方から「巣の保護よりも排除」の原理が、必然的に優先することになります。
 
 対策の基本は単純明解。外界から巣への通路を遮断することです。だがこれは予想以上の難事業でした。関係者は汗だくになって、高い塔内にナイロン糸やネットを張り巡らし、有刺鉄線で巣の入り口を封鎖しました。これはまさに鳩対人間の知恵くらべ、闘いでした。うまく排除できたと安心していても、翌日になると、鳩は泰然と巣に鎮座していたわけです。
 
 ことわるまでもなくこの遮断措置は、卵の孵(ふ)化をも完全に阻止します。それだけに作業を始めて数日後、窓枠裏でグロテスクな体肉むき出しのヒナを、四匹も発見したときはさすがにショックでした。小さな命の痛々しさは、親子のきずなの重みを呼び覚ますのに十分なものでした。ここで親子を強制的に引き離すことは、ヒナがたちどころに死んでしまうことを意味します。このことは動物の中でも最も長い間、親からの手厚い庇護を必要とする人の赤ん坊についても言えます。

 もともと私ども人間は、天性のやさしさとして弱いものへのいたわりの心、「判官(ほうがん)びいき」を具備しているのでしょうか。本園・スタッフ一同の心情も全く同じです。早速に寝床らしい場所をしつらえ、せっせと水や殻類を与えながら親鳥の代役をつとめられました。私はそんな様態を横目にしながら、目を閉じたまま少しも動こうとしないヒナ鳥の酸鼻(さんぴ)さを、「あと何日の命?」と冷めた気持ちで眺めておりました。

 風前のともし火と同様の命は、それでも3日めにエサをついばみ水を飲み、そして7日めには立って歩こうとしたのです。いわゆる人の1年の成長過程を、ヒナたちは7日間でやってのけるわけです。さらに続く「バタバタ行動」は、24日めの飛び立ち(巣立ち)への準備運動でもありました。自然界の摂理とは、誠にもって深遠です。しかし私が感嘆絶句する感動は、ここでのヒナ鳥は親鳥からの保護や世話を全く欠如したまま、自分で自分の発達課題を遂行したことにあります。まさしく「親は無くとも子は育つ」のです。この冷徹な哲理に向けて、えひめこどもの城の遊び体験は「保護と突き放し」の使い分けの重大さと、その必要性を厳しく告発していることを忘れてはなりません。

平成17年12月1日
 
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見えない学力
1.無駄の効用
〜雑学の強さ〜
《竹林》
2.手に仕事を、頭に思考を
〜だったら、全部やってよ〜
《創作工房》
3.鳩の糞(ふん)害
〜親は無くとも子は育つ〜
《光の塔》
4.合計特殊出生率
〜兄弟は他人の始まり?〜
《ボールプール》
5.一緒に遊ぶ人
〜お別れじょうず〜
《児童館周辺》
6.これから、児童館は
〜駆け込み寺〜
《遊歩道》